山と映画

山と映画

ネタバレ映画感想、登山ネタ中心のお気楽雑記ブログ

映画「ブルーハーツが聴こえる」ネタバレ感想:特色の違うオムニバス6作品!ブルーハーツ要素が薄いのは内緒…

ブルーハーツが聴こえる

f:id:Gorillan:20170418144744j:plain

 

満足度 ★★★☆☆

 

「THE BLUE HEARTS」が2015年に結成30周年というをきっかけに制作された本作。

監督や制作陣も異なりそれぞれカラーが違うので、ぶっちゃけ面白いかどうかは好みによるとしか言えない! 個人的に最後の「1001のバイオリン」がとても良かったので星三つ。

 

 

解説&予告

youtu.be

1995年に解散した伝説のパンクバンド「THE BLUE HEARTS」の楽曲を、李相日、清水崇ら6人の監督が自由な解釈で映像化したオムニバス映画。同棲して3年になる彼氏の浮気現場を目撃してしまう女性の苛立ちを描く「ハンマー(48億のブルース)」(主演:尾野真千子/監督:飯塚健)、執筆中に自身の高校時代へタイムスリップし、片思いの相手と再会する脚本家を描いた「ラブレター」(主演:斎藤工/監督:井口昇)のほか、「人にやさしく」(主演:市原隼人/監督:下山天)、「少年の詩」(主演:優香/監督:清水崇)、「ジョウネツノバラ」(主演:永瀬正敏/監督:工藤伸一)、「1001のバイオリン」(主演:豊川悦司/監督:李相日)の6編で構成。

ブルーハーツが聴こえる : 作品情報 - 映画.com

 

監督

f:id:Gorillan:20170418151408j:plain

僕が一番面白かった「1001のバイオリン」を担当したのが李相日監督。毎度のことながら初めてお顔を拝見したし監督の代表作が出てこない…と思っていたら「69 sixty nine」「フラガール」「悪人」など、意外と自分も見ている作品が多かった。ブログだとこんな風に自分で調べて書くようになるから覚えやすい。心に響く、メッセージ性のある作品が監督の色なのかな? 本作はとにかく自分の一番心に響いた。

 

映画.comで豊川悦司とのインタビュー記事もあるので興味があれば読んでみてください。

 

eiga.com

小学校から高校まで朝鮮学校に通い、大学卒業後に日本映画学校で学ぶ。卒業制作で撮りあげた「青・chong」(99)でPFF(ぴあフィルムフェスティバル)のグランプリを含む4つの賞を受賞、スカラシップ作品「BORDER LINE」(02)で劇場デビューを果たす。その後、村上龍の自伝的小説を宮藤官九郎の脚本で映画化した「69 sixty nine」(04)の監督に抜擢。常盤ハワイアンセンターでの実話を元にした「フラガール」(06)は、その年の国内の映画賞を総なめにし、日本代表作品として米アカデミー外国語映画部門にエントリーされた。4年ぶりの長編「悪人」(10)はモントリオール世界映画祭や釜山国際映画祭で上映され、国内外で高い評価を得ている。

李相日 - 映画.com

 

 

その他

・ハンマー(48億のブルース) 飯塚健

・人にやさしく 下山天

・ラブレター 井口昇

・少年の詩 清水崇

・ジョウネツノバラ 工藤伸一

 

キャスト

f:id:Gorillan:20170418152913j:plain

監督同様、オムニバスなので他作品で沢山の俳優さんが出ておられます。全員紹介しているときりがないので監督紹介に倣って「1001のバイオリン」主演の豊川悦司さんをご紹介。本作では被災者役ということで話す言葉も東北弁だった。トヨエツのスラっとした風貌から発せられる訛りは違和感もなく馴染んでいた。カッコいいお父ちゃん役が似合うよねぇこの俳優さん。

 

「存命の人を演じる時と同じように、デリケートにアプローチしないといけないなという気持ちがありましたね。実際に被害に遭われた方たちが、この映画を見た時にどう感じるんだろう、どう思うんだろうということに対して、とても丁寧にやっていかないといけなかった」

 

インタビューでも言っているように本作にかける思いは相当なものだったようで。是非、注目してみてください。

 

 

その他

・ハンマー(48億のブルース)
後藤一希(尾野真千子)
久保力(角田晃広)
佐野結(萩原みのり)
相川奏(伊藤沙莉)

 

・人にやさしく 

男(市原隼人)
女(高橋メアリージュン)
弟(浅利陽介)
兄(加藤雅也)
老紳士(西村雅彦)

 

・ラブレター

池野大輔(斎藤工)
小松純太(要潤)
吉田彩乃(山本舞香)

 

・少年の詩

石川ユウコ(優香)
石川健(内川蓬生)
永野昭司(新井浩文)

 

・ジョウネツノバラ

永瀬正敏
水原希子

 

・1001のバイオリン

秋山達也(豊川悦司)
秋山絵里子(小池栄子)
安男(三浦貴大)
秋山杏奈(石井杏奈)
秋山圭吾(荒木飛羽)

 

感想

「ハンマー(48億のブルース)」

f:id:Gorillan:20170418155323j:plain

 

話は三年同棲していた彼氏の浮気している瞬間を後藤一希(尾野真千子)が発見するんだけど、彼氏に面と向かって何も言えない状態のモヤモヤした感じでスタート。それでも職場の先輩である久保(角田)やJKコンビのアドバイスがきっかけで一希は自分自身に決着をつける…って話。

 

東京03のコントかと思った! というかきっとコントだったんだろう。とにかく最初から最後までテンポが良くて、本作のトップバッターとしてバッチリだった。普段はボケ担当の久保役・角田のキャラが濃すぎ……かと思いきやJK役の二人が更に強烈な漫才ノリでびっくり。掛け合いが完璧すぎてネタになり過ぎているのが個人的には少し残念。

 

かといって全てがお笑いの空気に染まらないのは、主演の尾野真千子の存在が大きいんだろうね。やっぱりいくらちゃらけていても”女優さん”ってオーラがある。本作では男運の悪いアラサー女性を砕けた感じで演じている。なんでこんないい子があんな奴に…という恋愛あるある話ではあるものの、ブルーハーツの「ハンマー」に割とフィットしていたと思う。というか楽曲とのシンクロ率で言えば「ハンマー」が一番だと思っている。

 

「人にやさしく」

f:id:Gorillan:20170418163208j:plain

 

SF。宇宙船の中で繰り広げられるアクション作品。刑務所惑星を目指す囚人護送船が流星群に襲われて……市原隼人が”ヒューマノイド”というロボット役。

助かるには宇宙船の外にある部品をうんぬん…でも宇宙服が船内にはない!

「でも俺なら宇宙服なんていらないぜ」と市原隼人。でもヒューマノイドに人類はこれまでひどい仕打ちを……というテンプレ展開のこの話。

 

ブルーハーツの楽曲で「人にやさしく」が一番好き! という人も多いだろうけど本作の出来はいかがだろうか? 僕ははっきり言ってガッカリした。別に「人にやさしく」である必要性を感じなかったし、作品としてもあまりにもお粗末だったから。演者さん達は誰も悪くない。監督、脚本家のせいでしょう。

 

オムニバスということなので様々な作風で紡がれるのは良いんだけれど、これはねーわ。世界観や置かれている状況はすぐに理解出来るけれど、いかんせん短編なので感情移入も出来ない。本来ならばヒューマノイドである市原隼人の慈愛に感動するはずなんだろうけども。百歩譲って感動できる作品だとしても「人にやさしく」のイメージじゃ無いわ。

 

う~ん…残念。

 

ラブレター

f:id:Gorillan:20170418180045j:plain

 

池野大輔(斎藤工)と小松純太(要潤)が、過去に戻って死んでしまった初恋の相手吉田彩乃(山本舞香)を助けに行くっつータイムパラドックスもの。設定は定番としても、全体的に雑で正直微妙だった。井口昇監督の作品をWikiでざっと見てみたが、申し訳ないけどあまり知らない作品ばかり。

 

ハマる人にはハマるのかなこれ? 便器から中学時代へタイムスリップ、初恋相手の両手がハサミに。いやいいんだけど、やるならやるでB級映画感をもっと出してほしかった。下手にノスタルジーな雰囲気も取り入れているから振り切れてない気がする。

……「ラブレター」だからいいのか。

 

それでも鑑賞後に何とも言えない甘酸っぱい気持ちになれれば、まだよかったんだけど覚えているのは滑り気味のギャグシーンばかり。う~ん

一応、恋の話でラブレター(物理)も出てくるのでタイトル通りと言えばそうなんだけど……ついでに言うと、あの中学生時代のビジュアルから今のビジュアルになるのは少し無理があったんじゃ…

 

少年の詩

f:id:Gorillan:20170418182708j:plain

 

これ好き。そうそうこういうのでいいんですよ。清水崇監督と言えば「呪怨」のイメージが強かったけどこういうのも得意なんだね。1987年当時の雰囲気がもの凄くリアルに再現されていた。夕方、外から聞こえてくる子供の声や当時のCM、そして団地の雰囲気やデパートの屋上など懐かしい気持ちになった。

 

優香もすっかりお母さん役がハマる歳になったんだよなぁ…と、当時大ファンだった僕も感慨深い気持ちになるわぁ(遠い目)

話はクリスマスのあるシングルマザー家庭の一日。母の石川ユウコ(優香)はパート先のデパートで上司の永野昭司(新井浩文)から言い寄られる。偶然、デパートでその瞬間を見てしまった息子の石川健(内川蓬生)が永野に一発お見舞いしにいくっつー話。

 

子供の頃好きだった戦隊ヒーローっていたでしょう? 健はそのヒーローに触発されて衝動的に走り出すんだけど、男ならあの感じは分かると思う。いいんだよ、悪いことしてしまったのかもしれないけど、母ちゃんはきっと「ありがとうね」って言ってくれる。上司の永野に一発食らわせる健の姿は、まさに正義のヒーローだった。

 

ジョウネツノバラ

f:id:Gorillan:20170418185319j:plain

 

全編セリフなし。脚本には主演も務めた永瀬正敏も参加した模様。監督の工藤伸一氏は本作で映画監督デビューしたらしい。CMやMVを多く手掛けロンドンでグラフィックデザイナーをしていたみたい。映像美を追求し…なるほど、だからか、と今書いていて納得。本作を観ていて「とにかく映像はきっとこだわってんだろうなぁ」とは思った。

 

セリフが無いものの、永瀬正敏の表情や視線で十分何を訴えたいかというのは理解出来るけど(それはそれですごいよね)見どころはそれだけじゃない。炎や光、暗闇の演出やカットが凄くキレイだった。”死後硬直”や”腐敗”、というかこれってもはや犯罪なんじゃ…なんて細かいことを忘れるレベル。水原希子は骸なのにとても存在感があった。

 

そしてこの映画ってなんだっけ…と永瀬正敏の年老いた姿をみて思い返す頃、きちっと「情熱の薔薇」なんだと思い出させてくれた。最後まで洒落た演出だったなぁ。本作が一番好きという人も多いかもしれない。

 

1001のバイオリン

f:id:Gorillan:20170418193249j:plain

 

「ブルーハーツが聴こえる」という映画でまさか福島原発の話が来るとは思っていなかったので驚いたけど、一番心に響いたのが本作。もうこれ別の映画で一本作ってもいいんじゃね? と思った人も多いと思う。

 

福島原発の元作業員、秋山達也(豊川悦司)と家族の話。秋山一家は震災が原因で福島を離れ東京に移り住んでいる。家族は徐々に東京生活にも慣れつつあるけど達也は……という正直少ししんどい話。でも最近、福島から移り住んだ人に対するイジメについての報道をよく耳にしていたので嫌でも興味を惹かれた。

 

月並みのことしか言えないし、僕がここに書いてもしょうがないことだけど、まだまだ復興なんて出来ていない現地福島の現実と、報道でしか現地の様子を窺い知ることしか出来ないテレビの前の僕らとでは、とんでもない温度差があるんだろうと思う。

本作は達也が後輩の安男(三浦貴大)と共に、当時飼っていた犬を探しに行くというだけの話。うまく言えないけれど、ただそれだけの話なのに、もの凄く心に来るものがあった。

 

まとめ

ぶっちゃけブルーハーツが薄い! というのが僕の感想。先ほど書いたけど「ハンマー」が一番ブルーハーツっぽい以外、無理やり感がある。でもそれはしゃーない、十人十色だもんね。ただ、全六作の中できっとお気に入りの作品がきっと見つかるんじゃないかと思うし、もしかしたらこの映画をきっかけにブルーハーツに初めてのめり込むという人もいるかもしれない。

 

あぁそれにしてもブルーハーツのライブには一度でいいから行ってみたかった。世代がね……僕らよりもう少し上の人達がうらやましい。

 

個人的な順位

1.1001のバイオリン

2.ハンマー(48億のブルース)

3.少年の詩

4.ジョウネツノバラ

5.ラブレター

6.人にやさしく

 

最後に今では伝説と言われている日比谷野外音楽堂のライブを貼っておきます。

 

youtu.be

 

 

ではでは