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映画「LION ライオン 25年目のただいま」ネタバレ感想:タイトル回収が気持ちいい!ハッピーエンドで安心して観れるノンフィクション!

ライオン

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満足度 ★★★☆☆

 

「事実は小説より奇なり」という言葉を地でいく本作。アカデミー賞ノミネートというだけでも興味をそそられたし、デブ・パテルの成長ぶりも観てみたかった。彼はどうしたってスラムドッグ・ミリオネアのイメージが強いので、本作が新たな代表作になるといいよね。

 

 

解説&予告

youtu.be

インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を探し出したという実話を、「スラムドッグ$ミリオネア」のデブ・パテル、「キャロル」のルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンら豪華キャスト共演で映画化したヒューマンドラマ。1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタ(コルカタ)まで来てしまう。そのまま迷子になったサルーは、やがて養子に出されオーストラリアで成長。25年後、友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶とGoogle Earthを頼りに、本当の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる。

LION ライオン 25年目のただいま : 作品情報 - 映画.com

 

監督

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監督はガース・デイビス。オーストラリア人で長編監督作品は本作が初めて。広告業界出身の監督みたいだね。とりあえずイケメン。

 

2000年、母国オーストラリアでドキュメンタリー映画「P.I.N.S.(原題)」を監督。その後は広告業界でCMディレクターとして活動し、世界3大広告賞と呼ばれるカンヌライオンズ、クリオ賞、One Showで受賞するなど実績を残す。ジェーン・カンピオンが企画・制作総指揮を務めたミステリードラマ「トップ・オブ・ザ・レイク 消えた少女」シーズン1(13)では、4エピソードのメガホンをとり、カンピオンとともにエミー賞や英国アカデミー(BAFTA)賞の監督賞にノミネート。初の長編監督作「LION ライオン 25年目のただいま」(16)では、米監督組合賞で長編映画部門と初長編映画部門にノミネートされた。続いて、マグダラのマリアを主人公にした「Mary Magdalene(原題)」(17)でメガホンをとる。

ガース・デイビス - 映画.com

 

キャスト

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主演はこの人デブ・パテル。 濃いよねぇ。インド系の両親の元ロンドンで生まれる。このバックボーンの時点で本作の主人公、サルー役が彼の為にあるようなものだと思うよね。自分のルーツとは違う場所で育つというのは心情的にも重なるだろうし。アカデミー助演男優賞取らせてあげたかったなぁと個人的に思った。なんだろう、すごく応援してあげたくなる雰囲気なんだよね。

 

 

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ヒロインでサルーの恋人役にルーニー・マーラ。デブ・パテルの成長ぶりにも驚いたけど、ルーニー・マーラにも驚いた! 「ソーシャル・ネットワーク」にも出演していたらしいけど全然覚えてない。やっぱりこの人は「ドラゴンタトゥーの女」で魅せたツンデレというかヤンデレなワイルドなイメージだったのに、本作ではいわゆるフツーの女性を演じている。しかもすげぇ可愛い。こんな役も出来るんだなぁ。ナチュラルメイクも似合うのね。

 

 

その他

ニコール・キッドマン(スー)

デビッド・ウェンハム(ジョン)

サニー・パワール(サルー幼)

アビシェーク・バラト(グドゥ)

プリヤンカ・ボセ(カムラ)

タニシュタ・チャテルジー(ヌーレ)

ナワーズッディーン・シッディーキー(ラーマ)

ディープティ・ナバル(ミセス・スード)

ディビアン・ラドワ(マントッシュ成)

サチン・ヨアブ(バラト)

パッラビ・シャルダー プラマ

アルカ・ダス サミ

 

感想

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ノンフィクション作品はやっぱり面白いね。タイトルにもなっている”LION”は主人公サルーの本当の名前、「シェルゥ」意味はライオン。本人もサルーと間違えて認識していたらしい。これが分かった時はゾクゾクした。

「そんな意味が~!!!!」と心の中で思わず唸った。そして、兄は既に亡くなっていた。サルーと別れた場所からあまり離れていない場所で電車に轢かれてしまったようだ。

 

びっくり、というか「!?」となったのはこの二点。その他の展開は概ね予想通り。

前半、サルーの幼少期がとても長く感じた。デブ・パテル演じる青年サルーのターンが最初に来ると思っていたので余計長く感じたのかもしれない。上映時間の約半分は幼少期の物語で占められている。小さい少年少女が学校にも行かず働く姿はインド映画とワンセットで特別珍しくもない。(この感覚もどうかと思うが)

デブ・パテル主演ということで幼少期のこのターンで「スラムドッグミリオネア」をきっと皆思い出しているんだろうなぁ、なんて思いながら観ていた。

 

「そもそもどんないきさつで大陸のインドからオーストラリアへ渡ったのか?」嫌な予感しかしないものの僕が前半のパートで気になっていたのはこの点で、理由と描き方がどんな風になるのかとても気になっていた。嫌な予感というのは人身売買のこと。東南アジアやインドではよく目にするフレーズだよね。

 

結論から言うと、施設に保護されたサルーは孤児院経営者でオーストラリアへ養子縁組のコーディネーターをしているミセス・スードにお世話になる。ミセス・スードや孤児院周辺については掘り下げて描かれていないので詳細は分からないが一つ言えること、それはサルーは強運の持ち主だということ。

迷子になって親や故郷と離ればなれになってしまったことはとても残念で悲しい出来事かもしれないけれど、少なくとも今より裕福で文明的な生活を送れることになったというのも事実。インドに居たら勉強も出来ず、生涯を小さな村で過ごすだけだったかもしれない。

 

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ようやくデブ・パテルのオーストラリア生活の話が始まったと思いきや、彼は友人宅のキッチンで例の揚げ菓子を発見してしまう。ここからのサルーは正直あまり好きじゃない。彼女のルーシー(ルーニー・マーラ)との関係も蔑ろに一方的に別れを告げ、仕事もほっぽりだしとても荒んでいたように見える。実際、家族関係にもヒビが入り父ちゃんはまいっていた。

 

「僕だけが幸せではいられない、実の兄と母が毎日僕を探しているんだ…25年間も…」そりゃそうなんだろうけど…この辺りは彼がどんな生活を送っていたのか詳細には描かれていないので何とも言えないけれど、とてもウジウジしていてイライラさえ感じた。

悩むのは分かるんだけど、、、

 

僕はてっきりルーシーや友人達に協力してもらってグーグルやその他SNSを駆使し、母を探し出すパートが大半を占めるもんだと思っていたので残念だった。サルーが感傷に浸っているシーンはそんなに大量に要らないよ、と。

実際、それこそググれば分かるがグーグルアースはもちろんFacebookも大活躍したそうだ。それについて全てカットされている辺り、スポンサーの都合や大人の事情が透けて見えて何とも言えない気持ちになるよね。

 

そしてグーグルアースを使うものの、故郷をなかなか見つけることが出来ず自暴自棄偶然になりかけたあたりで偶然にも故郷を発見する。ガネストレイと記憶していた村の名前は実はガナッシュ・タライという名前だった。

この辺りで実に映画全体の8割弱まで来ている。そして母と再会のシーンとなるわけだけだけど…

 

サルーの友人、恋人の描写が弱くて「それ必要だった?」ってシーンがチラホラ。

特にルーシーとの描写はとても中途半端な気がしてモヤモヤする、というか実際の関係もどうやらくっついたり離れたりを繰り返している模様。とにかくそれならそれで上手く脚色するなりして中途半端さは消してほしかったなぁ

 

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色々と文句ばかりだけど、ラストの再会シーンは胸が熱くなった。

何十年ぶりに会おうと親子はすぐに分かったんだね。いつか息子が帰ってくるかもしれないから引っ越しはしなかったという母ちゃん、凄いよなぁ。

 

そして「グーグルアースってすげぇ!」と言わせたい感じがちょいちょい出てくるのが鼻に付くが、スポンサーなのでしゃーない。それより印象に残るのは線路のシーン。サルー自らの人生を表しているかのように、この映画では線路のシーンがとても印象的だった。ラストも亡くなった兄との線路でのシーンで終わる。

 

あの日、兄の仕事に付いていくと駄々をこねたのも、夜寝てしまったのもサルーの分岐。彼が乗っていた線路には様々な分岐があって、一つ一つ選んで来た結果ついには自分の人生が映画となってしまった。

人生何があるか分からないけれど、人生って素晴らしい! ……ついでにグーグルアースも素晴らしい…

 

そんな素敵な映画でした。

 

 

ではでは