映画「ねこあつめの家」ネタバレ感想:「大切な事はねこが教えてくれた」←マジでこれだった
ねこあつめの家
満足度 ★★★★☆
累計1900万ダウンロードの人気アプリがついに実写映画化! ごめん「ねこあつめ」はやったことが無い……
【鑑賞前】
「猫あるある」をふんだんに盛り込んだまったりゲームということ位しか分からないまま鑑賞…初見の人にもやさしいといいなぁ…
【鑑賞後】
……笑いあり涙ありでめちゃくちゃ面白いじゃねーか!!!
解説&予告
庭先に訪れる猫たちをながめて楽しむスマートフォン向けゲームアプリ「ねこあつめ」を、伊藤淳史主演で実写映画化。若くして新人賞を受賞し、一躍人気作家となったものの、現在はスランプに陥ってしまった小説家の佐久本勝。不思議な占い師からの予言とおかしな不動産屋の勧めから、片田舎の古民家に逃げるように移り住むことを決めた佐久本だったが、暮らしは変わらず、生活は下降線をたどる一方だった。途方に暮れ、縁側で庭をながめる佐久本の前に1匹の猫がふらりとやってきた。主人公の佐久本役を伊藤、担当編集者のミチル役を忽那汐里が演じ、田口トモロヲ、木村多江、大久保佳代子らが脇を固める。監督は「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」の蔵方政俊。
監督
監督は蔵方政俊(クラカタマサトシ)。「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」の監督さん。「世界の中心で愛を叫ぶ」「舞妓 Haaaan!!!」では助監督もされていたようで、これから期待の監督さんなんだって。僕は蔵方監督の作品はこれが初めてだったけれど、本作がとても良かったので次回にも期待しちゃう。
キャスト
主演は伊藤淳史。世代的にどうしてもチビノリダーの印象が強いけど、実は2つしか歳が違わないということを初めて知った。しかも一児の父なんだね、絶対いいお父さんでしょう! 本作ではスランプに陥っている作家を熱演。ちなみに家では犬を飼っている犬派なんだって。次回は6月に公開の『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』に出演予定。
そしてもう一人の主役が忽那汐里。 本作では出版社の若手編集者という役どころ。オーストラリアで14歳まで生活していたもはや半分オージーだろって美人。映画『ジ・アウトサイダー(原題) / The Outsider』でハリウッドデビューも果たしている模様。公開は未定。なんでも300人の中からオーディションで選ばれたらしい。すげぇ。
その他
鴨谷進 - 戸田昌宏
猿渡めぐみ(不動産屋) - 大久保佳代子
貞中凜子 - 青戸浩香
佐久本の幼少期 - 大嶺創羽
北風裕也(写真のみ) - 蔭山征彦
占い師 - 村木藤志郎
老婆- 大山うさぎ
浅草 - 田口トモロヲ
洋子 - 木村多江
感想
冒頭でも言ったけれど、思いの外良かった! 僕はてっきりアプリの「ねこあつめ」をプレイしている人向けの作品かと思っていたので存外驚いた。これは邦画の良いところが全部詰まっているというか、洋画じゃあ出せない雰囲気だよねぇ。
こういう作品を観た時に、「日本に生まれて良かったわぁ」とつくづく思う。
そもそも本作のポスターを見ただけじゃどんな内容かも分からないよね? 僕は映画館のポスターで興味を惹かれたのがきっかけで鑑賞したクチ。アプリは何となく知っていた程度だし、スマホアプリの実写化自体珍しい。
「おいおいちゃんと映画になるのかよ」と思っていたけどあら不思議。同じ週に公開されたどの映画より面白かった。
話は至ってシンプル。作家の佐久本勝(伊藤淳史)がスランプに陥り環境を替えようと千葉の田舎、多古町へお引越し。古い家の庭にたまたま居た野良猫との出会いやもう一人の主人公、担当編集の十和田ミチル(忽那汐里)との関係を軸にスランプを脱出していくというハートフルなお話。
ゲームから入った人と、ゲームをやっていない人では当然鑑賞後の意見は違うんだろうね。この映画の見どころは何と言っても「猫たち」。鑑賞した人の中には「人間をもっと減らして猫だけ映して!」なんて思った人もいるかもしれない。
でもそれだとただの「ナショナルジオグラフィック」になってしまうので、脚本がしっかりあって人間関係でも楽しめる本作は僕はとても良かったと思う。
もちろん猫も可愛くて癒されるんだけれど、勝の成長していく過程も見応えがあった。一匹の猫との出会いからどんどん猫にハマっていく姿や、優しくというかしっかり周りを見渡せる人間に成長していく過程は観ていて気持ち良かった。
新人賞を取ったはいいけどそこから鳴かず飛ばず…同じタイミングでデビューした作家は売れ続け…自分の連載は打ち切り間近……という胃がキリキリする展開と田舎での、のんびりした猫ライフの対比が好き。
ただ、猫を飼ったことが無いので分からないんだけど野良猫ってあんなにバンバン家の中に入ってもいいもんなの? 庭で猫を見ている分にはとても微笑ましいんだけど、ノミやダニが気になってしょうがなかった。犬と同じでフロントラインとかすれば大丈夫なんだろうか……そこだけは気になった。
働いている人、特に20代はミチルの気持ちがよく理解できると思う。会社と自分との歯車が合ってないというか自分が空回りしてしまっている時ってのは、誰でもあると思う。特にミチルにとって佐久本は特別な作家。進学、就職、出産と人生の分岐にはいつも佐久本の本があった。
苦しんでいる佐久本を見て、どうにかしてあげたいんだけどコレって決定打が無い。モヤモヤするんだろうなぁ、そういうの。それでもミチルは出来る範囲でどうにかならないかと奔走するんだよね。一直線な感じ。もっとうまく立ち回ったり上司にアプローチするなりあるんだろうけど、若さが全面に出ていた。
そして勝に猫のイロハを教えてくれたキャットショップの主人、寺内洋子(木村多江)がいい感じ。ついにはコミュ障の勝をバイトに誘い、社交的な性格に矯正させてしまう。「すみませーん」という客の呼びかけに怖気づき裏へ引っ込もうとする勝の首根っこをつまみ、客の前に放り出す姿には笑わせられた。でもそこには愛があるよね愛が。
勝がそれまでどんな仕事をしてきたのかは分からないけれど、接客業ってのはバイトでも何でもいいから一度は経験しておくといいよね。社交的になるならないは別として、”窺う”というスキルは間違いなく上がるもの。
勝はバイトからも色々なことを学んだと思うけれど、バイトをするきっかけになったのも猫のおかげ。キャッチフレーズ通り、まさに「大切なことはねこが教えてくれた」ということですな。
大久保さんはまぁ…うん、役にとてもハマっていて良かったと思う。 派遣が長いだけあって制服の着こなしが様になってた。違和感なし、あのまま働ける。
ところで、序盤の占いで「タコ」が出てきた瞬間「?」となった人も多いだろう。でも僕はすぐにピンときた。「もしや多古町のタコじゃね?」と。なんせ地元からも近い場所。まさかスクリーンで多古町を観る日が来るとは思ってもいなかったので、千葉県民としては嬉しい限り。多古は「多古米」といってお米も有名なので興味のある方は是非。僕の実家のお米も昔から多古米の模様。
そんなわけで「ねこあつめの家」、思いの外ハートフルな良作でした。
ではでは