映画「サバイバルファミリー」ネタバレ感想:期待しすぎた!でも良い災害啓蒙映画だった。
「ウォーターボーイズ」「ハッピーフライト」の矢口史靖監督が、原因不明の電気消滅によって廃墟寸前となった東京から脱出した一家の奮闘をコミカルに描いたサバイバルドラマ。東京で暮らすごく平凡な一家、鈴木家。当たり前のように電化製品に囲まれた生活を送っていたある日、電気を必要とするあらゆるものがなぜか使えなくなり、東京は大混乱に陥ってしまう。交通機関や電話、ガス、水道まで完全にストップした生活に人々が困り果てる中、鈴木家の亭主関白な父・義之は、家族を連れて東京を脱出することを決意するが……。ベテラン俳優の小日向文世が父親役で主演を務め、母親役を深津絵里、息子役を「秘密 THE TOP SECRET」の泉澤祐希、娘役を「くちびるに歌を」の葵わかながそれぞれ演じる。
満足度 ★★☆☆☆
微妙!!! 期待しすぎたのかな…
ウォーターボーイズ、スウィングガールズ、ハッピーフライトと比べると見劣りしちゃう。きっと鹿児島までの道のりで間延びしたのが原因かも。お母さんの骨折前後? (あれ折れてたでしょ絶対!)と機関車の下りは割とだれていた気がする…
ざっくりあらすじ~
東京の少し古いマンションで暮らしている、矢口作品ではお馴染みの鈴木一家(どの作品も鈴木が主演なのだ 笑)。
ある日、何の前触れもなく停電に。あ~どうしよう
インフラ全て全滅。
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嫁の光恵(深津絵里)の実家でもある鹿児島を目指す。大阪より西は停電してないらしい…なんて噂もあるし
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途中のドタバタ。家族の絆フカマリー
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120日と少し掛かって鹿児島へ。おじいちゃ~ん!
そのまま2年と数か月滞在。皆自給自足が板に付く
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そしてある日の朝、電気を始めとしたインフラ復活。東京へ帰ろう
子供も大人も皆素敵な人間へ成長。
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エンディング
こんな感じ。
仕事で忙しく職場でも家でも自己中な父、専業主婦だけど魚も捌けない天然の妻、冴えない大学生の長男に今時ギャルの長女。家では特に仲良さそうに見えないバラバラな一家がサバイバル生活を通して一つになっていく様をコミカルに描いたんだろうけれど、正直心にグッとくるものは無かった。
きっと間延びもそうだけど、ギャグ、動要素、サバイバルといった部分が全て中途半端だったのかもしれない。ウォーター、スウィング、ハッピーフライトはそれぞれ明確なテーマがあったので…というより分かりやすい設定で主人公の気持ちも痛いほど理解出来る話だった。ヤロウ同士の熱苦しい友情や部活での悔しや、喜び、仕事での新人時代など誰しも経験のある話だ。
対して本作は、各キャラに対してそこまで気持ちが入っていかなかった。もちろん何を描きたいのか自分なりに理解しているつもりではあるけど、そこに”感動”というものは余り無かった。
それでも最後は優しい気持ちになれたのは、鈴木一家の成長が自分も嬉しかったからだと思う。そして素敵なご夫婦だ。というか奥さんの光江さん素敵でした。
僕の中でのハイライトは、やはり岡山の田舎で出会った田中さん(大地康夫)のくだり。燻製された豚肉の質感がスクリーンを通して容易に伝わってきたし、手作りであろう漬物やつやつやなお米が美味そうで美味そうで。
上映時間もお昼時だったので余計そう思ったのかもしれない……だけじゃなくて、田舎のおばあちゃん家を思い出す、とても良いシーンでした。
途中、お父さんの口だけ無能っぷりがバレてしまい(というか皆知ってた?)、お父さんめちゃくちゃへこみます。バレるというか嫁がついぽろっと言ってしまう…途中で出会った時任三郎、藤原紀香演じるアウトドアが得意そうな有能家族と自分を比較してしまったりもしたのでしょう。
世の中意地っ張りで頑固な人ほど損をする。分かっちゃいるけど素直になれない。年配の人ほどそういう人多い気がする。映画が始まって無能がバレる辺りまでのお父さんは、なんだかところどころ不快だった。すぐ怒鳴るし。
でもそんなお父さんも、このサバイバル旅を通してとてもカッコいい変貌を遂げます。終盤のお父さんはとても優しい、そして頼りになるいいお父さんへ。この生活で一番成長したのは、奥さんでもでも子供たちでもない、父、鈴木義之なのかもしれない。
そんなお父さんの成長過程も見どころの一つ。
結局、インフラが突然使えなくなった理由は何だったのか。人的なものではないようで太陽フレアが原因か? なんてことだったけれど、結局そんなものはどうでもよくてこの作品の魅力はやっぱり様々な人間模様。
”すべてがOFFになると人間がONになる。”
上手いキャッチコピーを考えるものだなあ。極限状態になった人間は機械と同じく電池が切れりゃ終わりだけれど、それまではとにかく生き残る術を全力で模索する。最後まで諦めなかった人だけが生き残れるんですね。
そこは登山も同じ。山に入ると強制的にでも人間をONにしないと生きて帰れません。
もし本作と同じように明日からなったとしたら? 自然災害の多いこの国では、サバイバル生活というのは決してスクリーンの中の話だけではありません。
最低限の準備を常にしておく必要があるのも確か。本作はある意味で災害啓蒙映画でもあります。
自宅の災害用ザックを見直すいい機会になったかも。皆さんももしこうなったらどうする? というシミュレーションをするのも良いかもしれませんね。
ではでは